急激に気温が下がり、風邪やインフルエンザが流行しています。これらの感染予防法の1つに「うがい」がありますが、実は正しくできていない人が多くいます。今回は、うがいの正しいやり方と、風邪やインフルエンザの感染予防方法について説明します。
■喉から風邪・インフルエンザに感染するメカニズム
風邪やインフルエンザの原因の80~90%はウイルスで、主に空気中のウイルスが喉の粘膜にある繊毛細胞に付着して増殖し、炎症を起こすことで発症します。ウイルスは増殖しながら細胞を破壊して外へ飛び出し、近くの細胞にまた感染します。
通常、喉の粘膜の繊毛は、1 分間に約 1,000 回振動し、粘液を外へ送り出すことで、喉から入ったウイルスなどの異物を排除しています。しかし、空気が乾燥すると、粘膜の表面に傷がつき、繊毛の振動が弱くなったり、止まってしまい、ウイルスが侵入しやすくなります。
また、口や喉に存在する黄色ブドウ球菌、緑膿菌、肺炎球菌などの細菌は、プロテアーゼやノイラミニダーゼという酵素を産生しますが、この酵素は喉の粘液層を破壊し、ウイルスが粘膜細胞に吸着しやすくします。
■うがいの風邪やインフルエンザへの効果
う がいというと、「喉に付着したウイルスや菌などの異物を物理的に取り除く」というイメージがありますが、実はそれだけではありません。うがいによる刺激が 粘液の分泌や血行を盛んにし、喉が本来持っている防御機能を高めたり、上述の粘液層を破壊する酵素を分泌する細菌を除外して喉の防御作用の低下を予防する などの効果もあります。
■正しいうがいのやり方
うがいというと、水やうがい薬を口に含み、上を向いて「ガラガラ」した後、「ペッ」と吐き出す方法を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。確かにこの方法でも効果はありますが、以下のように行った方がより風邪やインフルエンザを予防する効果が期待できます。
(1)口をゆすぐ
水やうがい薬を口に含んで「グジュグジュ」「ペッ」を行い、口の中の細菌や汚れなどの食べかすを洗浄します。口の中には、上述の通り粘膜を破壊する酵素を生成する細菌がいますので、これを洗い流すことも重要です。1度でスッキリしない場合は、何度か口をすすぎましょう。
(2)うがい
口を洗浄した後、今度は通常のうがいをします。水やうがい薬を口に含み、上を向いて「ガラガラ」「ペッ」をします。うがいをしている時、「オー」と発声すると、口や喉のおくまでしっかり洗浄できます。
(3)最後に水で口をすすぐ
うがい薬の中にはpH(ペーハー)が酸性のものがあり、頻繁にうがいをすると、歯の表面のエナメル質が溶けて傷つく「酸蝕歯(さんしょくし)」になることがあります。うがい薬を使用した場合は、最後に口を水ですすぎ、口の中を中和するとよいでしょう。
■うがいができない時は?
いくらうがいが重要だからとはいえ、1日中うがいをするのは現実的ではありません。感染力が高いウイルスだと、喉にウイルスが付着してからうがいをするまでの間に増殖してしまうこともあります。
う がいが頻繁にできない時や、感染力の強いウイルスによる風邪やインフルエンザが流行している時は、マメに飲み物を摂り、喉を保湿したり、付着したウイルス を飲み込んでしまうのが効果的です。ウイルスや菌は胃酸に弱いため、飲み込んでも問題ありません。また、当然ですが、外出時などはマスクをするのも大変有 効な予防法です。
京都大学保健管理センターが行った調査によると、正しくうがいを行えば、うがい薬を使わなくとも、風邪の発症が40%も抑 制されたとのことです。急に秋が深まり、既に風邪をひいている人も増えています。うがいを正しく効果的に行い、風邪やインフルエンザの予防に役立ててはい かがでしょうか。